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遺産分割協議における分割公式とは?

遺産分割協議の進め方。2次相続まで考慮すべき?

娘の上京スケジュールに合わせて遺産分割協議を行うことになりました。
長男は妹に財産目録を送信した際に遺産分割の方針を伝え、賛同を得ていました。
その方針はシンプルで「必要なだけ母親が相続し、余りがあれば子供たちがもらう。」というものでした。

家族のやり取り

遺産分割協議といっても簡単。基本的にお母さんが相続すればいいんじゃない、どう?

息子は妹に賛同を求めました。

ちょっと待ってちょうだい。生命保険や年金で十分よ。

私もお兄さんの意見に賛成。お母さんには相続税はかからないみたいだし。

あなた方の気持ちはありがたく頂くわ。その代わりあなた方の名義で積み立ててきた定期は正式に引き渡すわよ。

お父さんの介護と今後のお墓のこともあるので金額に差がついているのは理解してちょうだい。

もちろんお母さん大丈夫よ。

息子の根回しもあり、自然な成り行きでお母さんが遺産の配分を決める形になり、いい感じで遺産分割協議を終えることができました。

☛サイトの管理人より

亡父は遺言書を残さなかったので、遺産分割協議が必要となります。
母親は自宅に住み続けるので、分割協議の対象は預金と株式です。
母親が余生を送るのに十分な資金が確定すれば、おのずと子どもへの配分額が決まります。
スマート家では子どもたちが作った舞台で母親が子どもたちへの分割案を決めることなり、うまくまとめることができました。

☛専門家による解説

【1】遺産分割協議では相続人全員の合意により自由に遺産の配分を決定できます

【2】残された配偶者の生活の質(QOL)の維持を最優先に配分を考えるのが自然

【3】配偶者の余命が短いか遺産の大半が金融資産の場合は2次相続を考慮した方が良いでしょう

遺産分割協議の意義

遺言が無ければ遺産分割協議が必要になります。遺言がある場合でも相続人全員の合意で遺産分割協議へ移行できます。

遺産分割協議では全相続人の合意で遺産の配分を自由に決められます。

話し合いで決着がつかない場合は家庭裁判所の調停に移行しますが、その場合は民法が定める法定相続割合に収斂していきます。

遺産分割協議の進め方

1)遺産分割協議の事務方の役割
親が決定者、子供が事務方というイメージです。事務方の役割は遺産分割案と遺産分割協議書の作成、全員の合意を得たら捺印を集めることです。

2)財産目録と遺産分割協議書の準備
分割協議の対象となる遺産が記載された財産目録が必要です。分割協議後に新たな財産が判明した場合は、遺産分割だけでなく相続税申告のやり直しにつながるなど、面倒な事態になるので慎重に作成してください。

3)遺産分割協議の方法
日本人はみんなで集まってお金の話をするのが苦手です。
そのため相続人全員が集まってゼロから議論するより、事務方が段階的に根回しを行い、遺産分割協議は捺印の場とするくらいでちょうど良いと思います。

資料の共有や会議は、オンライン会議やLINEなどのSNSを効率的に利用しましょう。

一次相続の分割公式とは

本サイトでは普通のサラリーマン家庭の1次相続の場合、揉めることなく自然な流れで協議が終了する考え方を「1次相続の分割公式」と名付けました。

人生100年時代、残された配偶者の平均余命は保守的に長く見積もって「QOL資金」を計算し、さらに「余裕資金」を追加で確保してください。

年を経るにつれ不要となる「余裕資金」を段階的に取り崩し2次相続対策に回す構想です。詳しくは「サラリーマン家庭の相続税対策を考える」をご参照ください。

分割案ごとの相続税の試算方法

国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー(黄色バナー)」を利用して相続税の試算をすることができます。同サービスの前半は要否判定、後半は相続税の計算となっています。

2次相続まで考慮すべきケースとは?

最初の親が死亡したケースを「1次相続」、残った親が死亡したケースを「2次相続」といいます。

2次相続になると構造的に相続税負担が増えるため、1次相続で子供世代への配分を増やした方が1次と2次の相続税の合計が少なくなる方向へ働きます。

自宅が大半のサラリーマン家庭では親の配分を多めにとる「1次相続の分割公式」と、子どもの配分を多めにとる「1次と2次の合計相続税の最小化」はトレードオフになってしまいます。

2次相続まで考慮した方が良いケースはたとえば残された配偶者の余命が短いケースや遺産の大半が金融資産であるケースです。

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