遺言書が無い。問題になりますか?
サラリーマン家庭では遺言書は無いのが普通です
家族の雑談の中で、亡父の遺言書の有無についての話題が息子から切り出されました。
家族のやり取り
お父さんが遺言書を残してないかな?
いつだったかお父さんが遺言書のセミナーに出席したけど、うちには関係ないと言ってたわよ。
遺言書のセミナーに出席してたんだ。体調崩して弱気になってたのかしら。
友達に誘われたのよ。遺言書を残してないことは確かよ。
遺言書がないと何か問題になるのかしら?
遺言書がないことの不安がその場に漂ったのでした。
☛本サイトの管理人より
遺言書の一番の目的は「争族」を回避することにありますが、普通のサラリーマン家庭では遺言書を残していないのが一般的です。
1次相続では「争族」になる要因が顕在化しづらいので、遺言書が無くても不安になる必要はありません。
☛専門家の解説
【1】適切な遺言書には「争族」を回避し「遺産分割協議」を省略できるメリットがあります
【2】「争族」の要因が顕在化しづらい1次相続では遺言書のメリットは限定的です
【3】遺言書を残している割合は9.5%と一般に浸透したとは言えません
そもそも遺言書を残すべき?
1)遺言書の存在意義
そもそも遺産は故人のものでその処分に関して遺言があれば故人の遺志が優先される、というのが遺言書の存在意義です。
適切な遺言書があれば、争族を回避できる上、遺産分割協議を省略できる大きなメリットがあります。
2)遺言書を書くと決められるのは本人だけ
遺言は、遺産を残す本人が特定の目的を達成するために自発的・計画的に作成して本来意味をもちます。
頼まれて残した遺言書は、バランスが悪く遺恨を残す可能性が高くなるのです。
3)サラリーマン家庭の1次相続の特徴
本サイトではサラリーマン家庭の1次相続に関して「1次相続の分割公式」を提案してます。
このような考え方に沿って分割案を考えれば遺言が無くても争族になるケースは限定的でないでしょうか。
一般に遺言書が有効なケース
・企業経営、不動産投資、農業など事業承継を伴うケース
・相続人間において経済的格差が生じているケース
・特定の財産を特定の相続人へ残したいケース
・介護で世話になった子どもの嫁に財産を残したいケース
・相続人の中で特定の者の立場が弱いとか、問題児がいるケース
・相続人の中に認知症により法律行為ができない方がいるケース
・相続人の仲が悪いケース
・遺産の大半が不動産のケース
・夫婦間に子供がいないケース
・再婚により先妻との間に子供がいるケース
・孫に分けるケース
・事実婚のケース
・世話になった介護ヘルパーへ分けるケース
・日本赤十字社へ寄付とか、遺贈したいケース
遺言書がかえって混乱をもたらすケース
故人が良かれと思って残した遺言書が、相続人にとって物議を醸しだすことがあります。
独立して何十年もたつ子供たちの生活事情や金銭感覚がわからなくなっていて、遺言書が誰からも支持されない事態もあり得るのです。
なお、遺言があっても相続人全員の合意で遺産分割協議へ移行することができます。
どんな人が遺言書を残しているのか?
2019年の日本全体で亡くなられた方が138万人、このうち公正証書遺言書を残された方が11.3万人、自筆証書遺言書は1.9万人となります。
遺言書を残された割合は合計で9.5%となります。
生前に銀行や税理士へ相続対策を依頼すると、遺言書を残すことを指導されます。
顧問税理士など外部専門家から継続的に相続対策のアドバイスを受ける層、つまり、遺産額の大きい企業オーナーや大地主などは相応な確率で遺言書を残していると推測されます。
こうした富裕層の一部は、遺言を実行する役割や遺言の機能を代行する信託などを利用するため、信託銀行を活用しています。ただし信託銀行に依頼する費用は100万円を超えるケースが一般的です。
遺言公正証書作成件数(ソース:日本公証人連合会)
2019年 113,137件
自筆証書遺言書の裁判所による検認数(ソース:司法統計)
2019年 18,625件