生前贈与の廃止への対応策【2021年12月10日税制改正大綱】
【1】懸念された生前贈与が使えなくなる税制改正は2022年へ先送り
【2】生前贈与の廃止案は税制改正の俎上に上ったままの状態
【3】最短で廃止された場合、生前贈与のチャンスは残り3回!
与党の税制改正大綱について
2020年末に公表された与党の税制改正大綱は、生前贈与の非課税枠を格差是正に向けて改定する主旨でした。
この改正は相続税の節税対策の王道とされていた生前贈与(暦年贈与)が事実上「廃止」ということを意味してました。
ところが2021年12月10日に公表された2022年度税制改正大綱で、同改正案は先送りされました。
これは岸田政権発足直後に、格差是正を狙った金融所得課税の強化策により株価が急落したことを受け、富裕層を狙った一連の税制改正を先送りした一環と考えられます。
今後の改正の見通し
2022年度税制改正大綱では「・・諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める・・」
という表現で来期に向けて改正する意欲を表明しています。
想定されるシナリオ
生前贈与の改正案は早ければ2023年年度の税制改正大綱で具体化され、2023年4月より施行される可能性があります。
「法の不遡及」原則を踏まえると施行されるまでの生前贈与は現在の節税効果が有効と考えられます。したがって最短で改正された場合、2021年末、2022年末、2023年3月末までの3回、生前贈与のチャンスが訪れます。
可能性は低いですが、再延期または塩漬けの可能性もあります。
駆込みで贈与を実施すべきか
【積極的な相続税対策の方】
生前贈与が有効なうちに贈与を実施してください。
贈与する金額は110万円の非課税枠に拘らず、贈与することにより相続税の節税メリットが取れる水準となる金額の贈与を実施することをお勧めします。
3回ある贈与のチャンスを有効に活用ください。
【消極的な相続税対策の方】
これを機会にお子さんやお孫さんへ贈与をした場合のメリットデメリットを比較検討することをお勧めします。
迷ったら贈与税のかからない110万円までの小口の生前贈与を実施し、贈与をもらった側の反応も含め贈与の効果測定してはどうでしょうか。
【相続税がかからない方】
今回の改正に関連して贈与を実施する必要はありません。
まずはご自身の老後資金を試算して余裕があるようなら110万円以下の小口の生前贈与またはその都度贈与(子どもや孫の教育費、生活費、冠婚葬祭などの実費負担)を実施してはどうでしょう。
【相続税がかかるかどうか不明な方】
まずはご自身の保有財産に相続税がかかるかどうかの確認を行うことをお勧めします。
その上で相続税対策が必要かどうか、対策を積極的に行うかどうか決めることを推奨します。
国税庁が相続税の試算システムを提供していますのでご活用ください。
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→国税庁のサイトに遷移した後、黄色バナー「相続税の要否判定コーナー」をクリック
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