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目的別の財産目録の作成方法

申告の要否判断、遺産分割協議、相続税の申告の局面で必要です

息子が財産目録の作成に本格的に着手し始めました。息子が週末にLINEのグループ電話をセットしました。

家族のやり取り

相続税の本に、財産目録が重要と書いてあったけど、お母さん、何か手掛かりになるものないの?

財産のメモとか、お父さんから渡された記憶はないわね。

そしたらお母さん、実家にある遺産に関する書類を全部一か所にまとめておいて。

金融機関から残高証明を取寄せたり、お母さんできる?

そのくらいは私にだってできるわよ。あなた達は平日は時間取れないでしょうから。

銀行や証券会社への残高証明の請求、葬儀関係の領収書、固定資産納税通知書などは母親が集めておくことになったのでした。

☛本サイトの管理人より

財産目録は、利用する局面に沿って進化させる必要があります。

相続税の要否判定の際は概算ベースの財産目録で良いのですが、申告に向けて一部の項目を税法基準で評価しなおした正規の財産目録が必要になります。

☛専門家による解説

【1】相続税の要否判定の際は「概算ベースの財産目録」

【2】相続税の申告と遺産分割協議は「税法ベースの財産目録」

【3】財産目録は相続税法独特の判断基準による修正が必要になることがポイント

目的別の財産目録とは

1)相続税申告の要否判定の目的
すぐに手に入る情報で資産評価した「概算ベースの財産目録」を利用します。税法基準による資産評価には時間がかかるためです。

2)相続税の申告の目的
相続税の申告には資産を税法基準で評価した「税法ベースの財産目録」が必須になります。

3)遺産分割協議の目的
法定のルールはありませんが「税法ベースの財産目録」が良いでしょう。

目的別の財産目録の作成要領

「概算ベースの財産目録」「税法ベースの財産目録」の作成例(xlsx)

ステップ1)財産のたな卸メモ
故人が所有していた資産の種類、数量、時価をたな卸ししてメモを作成してください。計上漏れがないことがポイントです。

ステップ2)税法独特の判断基準で修正
一般的な意味の資産に税法独特の判断基準を加える必要があります。たとえば名義資産、生命保険、生前贈与の一部、故人の債務などです。

ステップ3)概算ベースの財産目録
相続税申告の要否判定の局面では、簡単に入手できる時価で評価した概算ベースの財産目録でかまいません。土地は固定資産税評価額の1.15倍、有価証券は死亡日の時価で評価します。

ステップ4)税法ベースの財産目録
相続税申告の局面では、税法基準で評価した財産目録が必要になります。土地は路線価ベース、上場株式は証券会社の相続用残高証明に記載されている最安時価で評価します。

相続税法独特の判断基準とは?

相続税法上、一般的な意味では資産とならない項目を財産目録に含める必要があります。

1)名義預金
税務署の目線で名義預金とみなされる可能性が高い場合は、故人の遺産として財産目録へ計上しておいた方が良いでしょう。
サラリーマン家庭の場合、最終的に「二つの特例」で相続税をゼロか少額にすることが可能です。
このため名義預金に該当するかどうかの論点で頑張っても意味がないケースがよくあります。

2)3年以内暦年贈与、相続時精算課税
いずれも財産目録へ含める必要がありますが、贈与税を支払っていれば税額控除できるので税金の二重払いにはなりません。

3)生命保険
故人が死亡したことにより相続人が受け取った生命保険は財産目録へ計上します。しかし非課税枠「一人当たり500万円×法定相続人数」があります。

4)死亡直前に引出した現金
死亡後に預金が凍結されることを見越して、まとまった資金を直前に引出すことが良くあります。
相続税の申告は死亡日時点ですので、当日の残高を財産目録へ計上する必要があります。

5)故人の債務
葬式費用、固定資産税、医療費、介護費などで死亡日時点で未払の費用は債務として財産目録へ計上することができます。
債務の計上は節税効果があるので丁寧に集計してください。
なお、お葬式で頂いた香典は財産目録への計上は不要です。贈与税もかかりません。このため香典返しは葬式費用には含まれません。

オフバランス項目

1)生前に購入したお墓
財産目録への計上は不要です。遺産分割の対象にもなりません。
お墓を管理する承継者が決まったらお寺や墓地の管理者に連絡し名義変更するだけです。

2)保証や連帯保証
保証先が倒産や自己破産していない限り、保証や連帯保証を財産目録へ負債として計上することはできません。
故人の資産を相続することで債務だけでなく保証や連帯保証も自動的に引き継ぐことなる点は念のため注意してください。

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